2006/05/26

映画『ダ・ヴィンチ・コード』

全世界で話題をさらっているという噂のミステリー『ダ・ヴィンチ・コード』(2006年5月20日公開)を観に行きました。ナルニア以来久しぶりの映画鑑賞かと思いきや、この間に名探偵コナンを2回観ていまして、おかげでポイントが貯まり無料鑑賞。大喜びで席に着いたのは良かったのですが、最初の30分間は観に来たことを猛烈に後悔しました。かなり残虐な光景を見る羽目になります。しかしここを耐えてしまえば、後はスリリングな展開と感動のクライマックスが待っているので、どんどん話に引き込まれました。

ミステリー要素が強いので感想を書くのは非常に難しいのですが、当たり障りのないことを書いてみたいと思います。ただし、思わぬところでネタバレしてしまうかもしれないので、これから観に行く予定の方は気をつけてくださいませ。

まず、観ながらつくづく思ったこと。この映画は日本には向かないのではないか、ということです。ストーリーは確かに面白い。しかし現在の日本は欧米諸国と違ってキリスト教、ひいては宗教に対する思いがさほど強くない国です。したがって、話中の登場人物が命がけで守ろうとする「真実」への思いも当然弱いわけで、見ている側の目的意識が定まらない…ここが致命的な欠点です。

逆に、キリスト教信者の方々、ヨーロッパ史や宗教学に精通している方々には、あまりにも事実を決め付けているように見えるんじゃないかな。試写会で各国のマスコミに笑われたというのも何となく頷けました。よく知っている人ほど笑ってしまうのではないかと思います。

ストーリーは、殺害されたルーヴル美術館の館長が、息絶える前に残した暗号をめぐって展開していきます。この暗号はほとんどアナグラム。アナグラムとは、文字を並び替えると別の言葉になるものですが、これはまさに母音と子音で綴られるラテン系言語(英語含む)にうってつけの暗号ですよね。日本語でやってもあまり面白くないです。主人公で象徴文字を研究しているロバート(トム・ハンクス)と、秘密ありげな女性警察官ソフィー(オドレイ・トトゥ)がこの謎を解いていくたびに、事件の背景もだんだんと明らかになっていく構成になっています。

トム・ハンクスの演技っていいですよねぇ。わざとらしい演出なんかも、彼が演じると自然と絵になるんですよ。海外の俳優では彼の演技が一番好き。オドレイ・トトゥはお初でしたが、憂いがあってフランス人らしい美しい女優でした。警部役のジャン・レノもさすがの存在感。中でも最も印象的だったのは、シラス修道士を演じた俳優ポール・ベタニーですよ。彼の存在が、ストーリーの暗い影の部分を支えていると言っても過言ではありません。映画では「サイラス」と発音されていましたね。目を背けたくなる狂気と悲しいまでの信仰心は非常に印象的でした。

黒幕は意外な人物で、動機にも唸らされましたよ。その真犯人が捕まってから、「聖杯」の謎を解いていく過程もさらなる見どころなんでしょうね。ポアロもホームズも真っ青なロバートの推理がすごかったです。音楽がどんどん盛り上がるラストシーンは感動的で、思わず「おー」って言いそうになりますよ。でも、肝心の「ダ・ヴィンチ・コード」と言えるモナリザに関する解釈を、最後の方にも入れてくれたらもっと締まった結末になったような気がするんですけど…。全体的に説明不足や演出不足と思われるシーンもあって、やはりこのあたりは原作を読んでみたいところ。

歴史は、正確な文献が紛失してしまったり、時の権力者によって歪められたりするもの。もちろん定説は存在しますが、どう解釈するかは人によって違ってもいいのではないでしょうか。作者が伝えたかったことは現代によくマッチした考え方であり、私はそこに共感できたため、割とすっきり観終わることができました。うーん、原作の本を買おうかどうか、非常に悩んでます。この手の話は、得てして文章で読んだ方が面白いですからね…

ダ・ヴィンチ・コード(上) ダ・ヴィンチ・コード(中) ダ・ヴィンチ・コード(下) 映画「ダ・ヴィンチ・コード」オリジナル・サウンドトラック

21:19 | エンターテイメント> 映画 | | コメント (2) | トラックバック (8)
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COMMENTS
Kirappy [2006/06/01 19:58]

▼杉原 啓史さん
はじめまして。コメントありがとうございます。
確かに一般的な日本人にはどうにも理解しにくいと思いました。

世界史の本を執筆されているのですね。私たちが通常の教育課程で学べる歴史はほんの上っ面だけですから、調査・研究していくと興味深いものなのでしょう。壮大な研究だと思いますが、実を結びますように!

杉原 啓史 [2006/06/01 13:05]

ダ・ヴィンチ・コードを少しでも楽しもうと・・・テンプル騎士団とか、シオン修道院とか、日本人に分かりにくいところを調べています。

とにかく「映画から歴史、歴史から映画」を積み重ねようと思います。

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ありがとうございましたm(_ _)m




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