2006/11/02
映画『父親たちの星条旗』
太平洋戦争末期、日本とアメリカが死闘を繰り広げた硫黄島(いおうじま)。日米双方の視点からその硫黄島を描く「硫黄島2部作」の第一弾、『父親たちの星条旗』を観てきました。アメリカ視点の作品です。戦争の本を読むことは多くても、戦争映画は大の苦手なんですよ。でもハリウッドがあの太平洋戦争を日本の視点からも描くなんて画期的だし、観ずにはいられなかったのです。
特にネタバレなどはないはずなので、これから観に行く予定の方も予備知識がてら気軽に読んでみてくださると嬉しいです。作品が作品だけに暗くて固い雰囲気になってしまいますが、悪しからず。
いやはや、素晴らしい映画でした。過剰な演出はなくドキュメンタリー風に進んでいく話の中に、人間の葛藤や平和の大切さというものがにじみ出ていると感じました。監督のクリント・イーストウッド氏は残虐な戦争を描きながらも、戦争を憎んでいるのでしょうね。最初は兵士たちの見分けがつかなくてとまどったので、もう一度見直したらさらに感慨深いものがあるかもしれません。
大砲や機関銃での撃ち合いがものすごい迫力でした。戦場の描写シーンは正直辛くて、「うわっ!」と思ったら目をつぶる戦法を実行。ホント苦手なんです…時代劇の合戦シーンなんかもたまに目を背けてるくらいですから。人間の狂気をつくづく思い知らされましたが、一兵士の思いというのは日本もアメリカも当然ながら同じなんですよね。日本軍による地下からの不気味な攻撃を受け続け、殺戮を繰り返して進まなければいけないアメリカ兵の「もうイヤだ」という絶望的な一言は心に響きました。
まだ激闘の最中に掲げられた星条旗。写真に写っていた兵士達は本国に呼び戻されて英雄扱いされ、アメリカの国庫を助けるための国債販売キャンペーンに駆り出されることになります。その英雄たちの苦悩がこの映画の見どころというかテーマになっていて、ことあるごとにフラッシュバックされる記憶の中で戦場を描くという演出になっていました。ラストでどっと感動するのではなくて、私は上映中ところどころでポロポロしてました…
一つ驚いたのは、戦争末期のアメリカってあれほど財政が苦しかったのか、ということ。やはりいろんな視点から物事を見ることは重要なんですね。今のアメリカにも声を大にして言いたいですよ、もう軍需産業に頼るのはやめましょうって。日本でいう官民の癒着とか、そんなレベルの話じゃないですからね。
あとは人種差別の問題にも触れられていて、本当に奥が深い作品でした。基本は戦争映画ですから興味の有無は分かれるでしょうが、予備知識がなくても十分戦争の恐ろしさ、虚しさを知ることはできると思います。
硫黄島が先に陥落したサイパンと東京の中間地点にあり、他の小笠原諸島ほど日本軍が防備していない人の住めない島だったこと。日本にしてみれば東京への本格的な爆撃を阻止するため、アメリカにしてみれば東京にB29をスムーズに送り込むため、双方絶対に譲れない島だったこと。これを理解しておくと、より死闘の意味が生きてくるのではないでしょうか。
はぁ、後世の人がこうやって冷静に分析することは簡単ですよね…書いててツライ…
来月には第二弾として、日本からの視点で描かれる『硫黄島からの手紙』が公開されますね。キャストに対する感想も含めて、鑑賞したらまた記事にする予定です。
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ありがとうございましたm(_ _)m